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おお神よ カメラをありがとう

Penseur

2015.03.13

しおにゃん

前回のブログ はミノルタα-9000についてでしたが、最後の方に同時期に発売され、

全然売れなかった機種、キヤノンT-80についてを触れました。

当時の正確な販売台数はわかりませんが、キヤノン党といわれたファンの人たちからも

「残念な子」という認識で見向きもされず、同じAF(オートフォーカス)一眼レフなのに、

便利さや機能、スタイルなどが勝り、ミノルタに宗旨変えをした人たちも数多くいました。

 

メーカを乗り換えた人たちについて、当初は新しいものに敏感な10~20代の若年層では

ないかという分析があったものの、蓋を開けてみると、目が悪くなり自力でピントを合わせ

づらくなった老年層が買い換えを促進するという、カメラ業界に

新たなビジネスモデルと顧客を創造するという快挙を成し遂げました。特に、それまで

キヤノン・ニコンに勝てず3番手4番手を追走していた、地元大阪の会社の快勝に、他人事

ながら喜びを感じていました。

 

話は戻り、キヤノンT-80ですが、外観の写真を見ると一目瞭然、レンズが変な形をしています。

キャノンT80

 

 

向かって右上に変な突起というか出っ張りがあり、円筒になっていません。そう、実はここに

レンズを回すモーターが入っているのです。実はこの年代まで、カメラメーカー各社がAF

一眼レフの開発を地道に行っていました。AF化するに当たって、当時の技術的に最大の

ネックとされていたのが、レンズを駆動させる動力やモーターの小型化、そしてピントの合う

精度を高めるための測距技術でした。今もそうですが、世界最高峰の技術のあるキヤノン

ですら、こんなに「ぼこん」と飛び出たモーターを収めることができませんでした。

一方、それまでと同じ外見でAF化を達成したミノルタのαシリーズはボディ内にモーターを

配置することで見た目のおかしさを解決しました。

 

ちなみに、ライバルのニコンはこの少し前に、こんなカメラを出しています。

F3_AF

 

F3という当時のハイエンド機を無理矢理AF化させた、壮大なネタというか実験というか、

当時見た誰もが度肝を抜かれた、このボディ。ペンタ部をAF測距ができるものに変更してあり、

ごまかしてはいるものの、レンズは周りにモーターが付いていて、一回りほど大きく、実用性

という面ではまったく意味をなさないものでした。しかしこのあたりからコツコツと積み上げた技術は、

その後F4、F5という名機に技術集約がされていっています。一見無駄と思える仕事でも、

積み重ねたスキルは将来必ず役に立つということを教えてくれました。

 

そして、実はここからがいよいよ本題です。タイトルでネタバレしていますが、休みの日にふらっと

街中を散歩していて、いつも見に行く中古カメラの店に立ち寄った瞬間、全米が3回くらい震撼

するほどの衝撃が私を襲いました。そこには、ぽつんと置かれたT-80が。

 

「ぬああああ! て、て、てぃーはちじゅうううう!!」

 

と心の中で叫びながらも、いい歳なのでクールに値段を見ます。

 

「1000円」。

 

もちろん即買いです。この値段なので、動きもしませんし、ミラーアップしたまま、うんともすんとも

言わないので、ファインダーを覗いたところでなんにも見えません。しかし、まぎれもなく今となっては

幻のカメラT-80です。おまけにAC35mm-70mmという専用レンズまでついてこの価格。

こちらが買う側なのに、トーカ堂の北社長のように、「1000円で…」と深々と頭を垂れて買ってきました。

T80

 

ひとまず玄関に飾って、毎日朝晩拝んでいます。いやあ、かっこいいですね。

 

ちなみに、現在キヤノンの主力機種であるEOSシリーズは、このT-80で辛酸をなめた、

レンズ内モーターという概念を貫き通し、現在に至ります。技術の進歩と開発力を武器に、

キヤノンはモーターを小さく薄くすればいいだけ、という当たり前のことを本気で突き詰めて

いきました。超音波モーターの実用化など、忸怩たる思いをした開発者の執念がEOSシリーズ

には感じられます。

 

この前、ここに書いたことで実現したので、今度も見かけたらほしいカメラを最後に書きたいと思います。

ペンタックス「A3 DATE LIMITED」。限定1000台という公式発表で発売されたため、発売当時でも

現物を見たことがありません。どこかで出会えますように…。